2013/09/30

選択





























マスター「またため息。」



















マスター「今日何回目?」

ロミオ「・・・・。」

マスター「わかってるわよ、あなたの悩みくらい。」
















ロミオ「へぇ~。」

マスター「子供のことでしょう?」

ロミオ「・・・・。」
















ロミオ「あんたにわからないことはないんだな。」




















マスター「イヤでもみえてしまうときがあるからね。別にみようと思ってみてるわけじゃないわ。」

ロミオ「そうなんだ?」

マスター「じゃなかったらプライベートもクソもないでしょう?」















ロミオ「・・・それで?」

マスター「・・・・。」

ロミオ「俺がどう選択するか、あんたにはみえてるのか?」

マスター「いいえ。」














ロミオが大きくため息をつく。


マスター「全部みえるわけじゃないのよ。それにみえないのは原因があるかもしれないし。」

ロミオ「原因ってなんだよ。」

マスター「さぁ?」












マスター「たとえばあなたが決断しない、とかね。」

ロミオ「・・・・。」

マスター「決断する前に解決した・・・って可能性もあるわね。」
















ロミオ「・・・・。」

マスター「悩むことは大事よロミオ。人は悩んで学んで成長するものよ。」

















ロミオ「俺の選択に一人の人間の命がかかってる・・・。」

マスター「そうね。」

ロミオ「子供だけじゃない。ミラだってそうだ・・・。アイビーだって・・・・。」















マスター「あなたが悩むのはミランダの気持ちを知ったからよね。」

ロミオ「・・・・。」

マスター「彼女の本音を聞いて同情してる。そうでしょう?」















マスター「自分ひとりだけ幸せになって、彼女が今後孤独な人生を歩むことに、あなたは後ろ髪をひかれているの。」

ロミオ「・・・・。」

マスター「でもアイビーちゃんのことを考えたら、決断できない。愛してるのはアイビーちゃんですもの。これ以上あの子を苦しめるのはあなたも辛いわよね。」













ロミオ「俺はあいつに散々我侭を言ってきた。・・・子供のことだって・・・俺の勝手な意見なのに、あいつは受け入れてきたんだ。」

マスター「あの子のことはあなたがよくわかっているでしょう?アイビーちゃんはすべてを愛することができる子よ。ミランダとの子供も、たとえ彼女たちと離れて暮らしていても、アイビーちゃんなら愛情を持つでしょうね。あなたを責めることはしないはず。」

ロミオ「・・・それがわかってるから辛いんだよ。」

マスター「あなたは一生十字架を背負うことになるわね。どちらの選択を選んだとしても。」

ロミオ「・・・・。」








マスター「噂をすれば・・・アイビーちゃんからよ。」

ロミオ「・・・・?」

マスター「電話。」


マスターがそう口にしたとたん、携帯電話の着信音が鳴り響く。













ロミオが携帯電話を手に取り画面を見つめる。


ロミオ「なんでわかるんだ。」

マスター「感じるからよ。彼女の念を。あなたがあの子の愛情を感じているようにね。」

ロミオ「・・・・。」













ロミオ「もしもし。」

アイビー『ロミオ?今なにしてる?』

ロミオ「飲んでるとこだ。」

アイビー『もしかしてマスターのとこ?』

















ロミオ「ああ。」

アイビー『やっぱりw かかってる音楽がそんな感じだったから。』

ロミオ「どうした?なにか用事か?」

アイビー『あ、うん。今日遅くなる?』

ロミオ「もう少しここにいるかな。」

アイビー『そっか。私今日帰れなくなりそうなんだ~。チャペルでのロケでね、帰り道がすごい渋滞してて・・・なんか雨で土砂崩れがあったみたい。』










ロミオ「大丈夫なのか?」

アイビー『うん。近くのホテルに撮影隊で泊まろうかって話になってる。明日には帰れると思う~。』

ロミオ「そうか。気をつけろよ。」

アイビー『うん。ロミオも飲みすぎないようにね~。』

ロミオ「ああ。じゃあな。」

アイビー『は~い。お休みなさい。』

ロミオ「おやすみ。」








携帯電話を切る。


マスター「ここのところ雨続きね。まぁ、この街に雨は付き物だけど。」

ロミオ「・・・そうだな。」














マスター「よかったじゃないの。独りの時間ができて。」

ロミオ「・・・・。」


















マスター「独りになってゆっくり考えなさい、ってことよ。」




















ロミオ「ゆっくりなんてしてられっかよ。そうしてる間にも子供は育ってる。」

マスター「そりゃそうよ。のんびりはダメよ。でもね、焦りも禁物よ。」

ロミオ「・・・・。」

マスター「自分にとってなにが大切か、考えるのね。」












ロミオ「・・・・。」

マスター「誰も傷つかない方法なんてないのよロミオ。」



























































ディーン「あ~おなかいっぱい。」

ラトーシャ「今日のお店、雰囲気も素敵だったしすごくよかったね。」

ディーン「そうだな。また行こうか。」

ラトーシャ「うん。」














ラトーシャ「あ。」


ラトーシャが立ち止まる。


ディーン「ん?どうした?」














ラトーシャがカバンから携帯電話を取り出す。


ラトーシャ「着信きてたみたい。」

ディーン「誰から?」

ラトーシャ「ララ。かけてみるね。」













ディーン「うん。」

ラトーシャ「あ、もしもしララ?電話した?」


















ディーン「・・・・。」

ラトーシャ「久しぶりだね。元気してた?」


















ラトーシャ「今ディーンと食事から帰ってきたところ~。ララは?」


ディーンが静かに階段をあがっていく。

















ラトーシャ「おばさんたちでかけてるの?一人で大丈夫なの?」


ラトーシャがソファーに腰掛ける。


ラトーシャ「・・・そっか。あいかわらず仲良いんだね。ララの両親。」













ラトーシャ「うん。もうすぐ夏の連休だからディーンとショア帰ろうかって話してるところ。そしたらララにも会えるね。早く見たいな。ララのおなかw」



















ディーンが二階の寝室へと入る。




















ポケットから携帯電話を取り出すと登録された番号に電話をかける。



















ローガン『はい。』

ディーン「よぉ。元気してるか?」

ローガン『ディーンか。久しぶりだな。どうした?』















ディーン「最近全然音沙汰ないから、どうしてるかなって思ってさ。」

ローガン『あいかわらず忙しい。今日もさっき帰ったところだ。』

ディーン「そうなんだ?」

ローガン『いまでかい仕事3件掛け持ちしてるからな。しばらくは休暇も取れそうにないな。』













ディーンがドアを開けてベランダに出る。


ディーン「そっか。もうすぐ連休だろ。休まないのか?」

ローガン『ムリだな。この件が片付くまでは・・・。連休は秋にでもとるかな。』

ディーン「そうなのか。大変だな弁護士さんは。」

ローガン『たった一人での個人事務所だからな。事務員でも雇おうかと思ってるところだ。お前は?連休は旅行でも行くのか?』









ディーン「いや、実家帰るつもりだ。ラトと二人で。」

ローガン『そうか。お前ら連休のたびにショア帰ってるな。』

ディーン「母さんが楽しみにしてるんだよ。お前は帰らないのか?」

ローガン『ないな。ショアにはもう4、5年帰ってねぇし。帰るくらいならどっか旅行いくだろうな。』













ディーン「そっか。」

ローガン『なんでだ?』

ディーン「いや、べつに。どうすんのかな~って思っただけ。」

ローガン『・・・・ララか。』

ディーン「・・・・。」

ローガン『あいつ、ショアに帰ったのか?』










ディーン「・・・・。」

ローガン『そうなんだな。安心しろ。ショアには帰らない。あいつにも会うことはねぇよ。』

ディーン「・・・・お前ってホント感が鋭いな。」

ローガン『お前はわかりやすい。まぁ、あいつは実家暮らしのほうが合うだろ。ちょっと安心したよ。』

ディーン「そっか。そうだな。」































ララ「もう大変よ。すごいのよ食欲が。私ここに帰って何キロ太ったと思う?7キロよ?考えられる?」

ラトーシャ『ははw でも二人分だもん。しょうがないよ。産んでからまたダイエットがんばればいいんだから。』
















ララ「でも私太りやすい体質でしょう?元に戻るかどうか不安だわ~。それに今お料理の勉強もしてるから、ついついよけいに食べちゃうのよね。」

ラトーシャ『そうなんだ?料理教室通ってるの?』

ララ「ううん。最初はそうしてたんだけどね。おなかが目立つようになってからは通うのも大変だから、最近は家政婦さんに習ってるのよ。」












ラトーシャ『家政婦かぁ~。さすがララんちだねw』

ララ「ママの実家が資産家だから。それにおじいちゃんが亡くなったのも去年だし。」

ラトーシャ『そっかぁ。』

ララ「そういえばアイビーは元気にしてる?発表前に連絡きてから最近は全然なのよ。」












ラトーシャ『あ~、私も会ってないんだ~。いろいろ大変だったみたいよ。婚約発表で騒がれたのと引越しが重なって。』

ララ「引っ越すって言ってたわね。ロミオさんのところでしょう?」

ラトーシャ『うん。なんか家を軽く改装したみたいでね。今度遊びにおいでって誘われてるんだけど、なかなか休みが合わなくって。』













ララ「素敵ね。私も行ってみたいわ~。ロミオさんってミステリアスだからどんなおうちに住んでるのか興味あるわよね。」

ラトーシャ『わかるw 私もそう思った。でも改装したって言ってたし、アイビーの趣味に変えられてるんじゃないかな?』

ララ「ふふっw ありえるわねw」

ラトーシャ『遊びに行ったらまた報告の電話するね。』

ララ「ええ。楽しみにしてるわ。じゃあそろそろ切るわね。」

ラトーシャ『うん。またねララ。』

ララ「ええ。またね。」








ララが携帯電話を切る。


ララ「ふふっw みんな相変わらずね。」

















ララ「 (結婚しても週末は二人でデートなんて素敵ね。ラトたちは夫婦っていうよりずっと恋人同士って感じね。羨ましいわ。) 」



















ララがゆっくりと窓辺へ移動する。



















窓の外を見つめる。
海沿いの小高い丘の上にたつこの家は、耳を澄ますと波の音が静かに聞こえてくる。


















ララ「 (ローガン、今日散歩中にあなたのお母様をみかけたわ。家が近所だってこと、すっかり忘れてた。) 」



















ララ「 (あなたの番号を・・・ずっと消せないでいるのよ。なにを待っているのかしらね私・・・。期待してるつもりはもうないの。でも・・・どうしてかしらね。覚悟は決めたつもりなのに・・・・消せないのよ。) 」

















ララ「 (・・・・まるでお守りみたいに。・・・きっと・・・・どこかであなたと繋がってる気がしているのかもしれないわね。) 」