2015/05/13

彼女の涙








深夜の街を二人を乗せた車が走る。

























ジーン「アイビー、明日休みだっけ?」

アイビー「うん。そうだよ。」

ジーン「ちょっと寄り道してもいい?」





















アイビー「うん・・・いいけど、どこ行くの?」

ジーン「俺がたまに行くお気に入りの場所なんだけど・・・一緒に行きたいなって。」
























アイビー「そんなとこあるんだ?お店?」

ジーン「ううん。着くまで内緒。」

アイビー「え~。」












































たどり着いたのは港の先の防波堤だった。


























アイビー「ジーンのお気に入りの場所って・・・ここ?」



























ジーン「そう。来たことある?」


アイビー「ううん。はじめて来た。」

ジーン「だと思った。」























ジーン「ここからだと、ブリッジポートの街が見渡せるんだ。それに、誰もいないからひとりになれる。」






















アイビー「山側は夜景スポットだから人多いもんね。」


ジーン「だろ。ここならたまに夜釣りしてる釣り人がいるくらいだし。ひとりで考えたいときはよくここに来るんだ。」

アイビー「そうなんだ?」





















ジーン「堤防の先のほう行ってみない?」


アイビー「うん。」























歩き出すジーンをアイビーが追う。

誰もいない堤防は波の音だけが静かに響く。
























ジーンが足を止める。

アイビーもその後ろで立ち止まった。























アイビー「綺麗・・・。」


ジーン「今夜は空気も澄んでるから、夜景が綺麗だな。」

アイビー「うん。」






















ジーン「ずっと夢だったんだ。この街で成功するのが。」



























ジーン「子供の頃からの。ブリッジポートで、だれもが知ってるデザイナーになる・・・それが夢だった。」


アイビー「もうすぐそうなるよ。」

ジーン「そうなればいいけど・・・・。」




















ジーン「俺、いままで結構苦労もしてきたからさ。不安になるんだ。あんまりとんとん拍子に進むと・・・。いつか落とし穴があるんじゃないかって。」





















アイビー「ジーンは堅実だもんね。」


ジーン「現実主義だからな。」

アイビー「でも、あんまり考えすぎるのもよくないよ。運命って流れるものだから、いいときは身を任せてもいいんじゃないかな。」






















アイビー「私はそう思うな。」


ジーン「アイビーは、夢はあるの?」






















アイビー「夢かぁ・・・・。なんだろう。」


ジーン「女優になること?」

アイビー「う~ん・・・・違う・・・。」

ジーン「・・・・。」

アイビー「普通の暮らしでいいから・・・・幸せな家庭を築くこと・・・・かな。」

















ジーン「結婚願望?」


アイビー「うん。変・・・かな?」

ジーン「いや、変じゃないけど。」

アイビー「うちの実家が賑やかだったから、子供たくさん欲しいんだ。いつもみんな笑ってる、楽しい家庭を作りたい。」



















ジーン「いいなそういうの。」


アイビー「うん。」

ジーン「俺も一人っ子だったし、母さんはいつも働いてたしさ。そういう家庭に憧れる。」

アイビー「そっか。」

ジーン「うん。」

















アイビー「 (家族・・・・・か・・・・・。) 」













































































翌朝。






















ミランダ「雨やんだわね。ずっとこんな天気?」


マシュー「昨日は晴れていましたが、最近は雨続きでしたね。」

ミランダ「相変わらず雨が多い街ね。」





















ヘイゼル「ニャ~。」



二階から駆け下りてきたヘイゼルがゆっくりとミランダに擦り寄る。


ミランダ「ヘイゼル。元気してた?」

















ミランダ「寂しい思いをさせてごめんなさいね。」

ヘイゼル「ニャ~。」

ミランダ「あなたを置いていったことを後悔したわ。私も会いたかった。」
















































ミランダがヘイゼルをそっと抱き下ろす。



マシュー「ミランダ様、午後から診察の予定が入っておりましたが。」




















ミランダ「明日に変更してもらえるかしら。少し疲れたから休みたいの。」


マシュー「かしこまりました。」

ミランダ「あなたももう休んでいいわよ。」


マシュー「はい。」

ミランダ「それから・・・。」






















ミランダ「あの子はこの部屋に来ていた?」

マシュー「アイビー様のことでしたら、先日掃除をしに来られましたが、ここ2日ほどは来ておりません。」



















ミランダ「そう。あの子にはしばらく電話しないで。」
























マシュー「かしこまりました。」


























ミランダ「荷物はあとでいいからそこに置いておいて。少し休むわ。」


マシュー「はい。」






























































































ミランダ「 (シャワーでも浴びようかしら・・・。飛行機で髪も肌も乾燥してるわね。) 」





























ミランダ「ん・・・?」



クローゼットの下になにかが落ちているのに気づく。



ミランダ「 (ここはマシューが掃除をしてくれているから、あの人がゴミでも見落としたのかしら?) 」
















ミランダがかがんでクローゼットの下に手を伸ばす。


ミランダ「 (なにかしら・・・。写真・・・?) 」



























落ちていた写真を拾い上げると、埃を払って立ち上がる。































ミランダ「これは・・・・。」



コーヒーの染みのついた古い写真。
そこには若い頃のミランダとロミオが写っている。





















ミランダ「あのときの・・・・。」

























マリオ「終了だ。お疲れさん。」


ミランダ「お疲れ様でした。」


























リリィ「ねぇ、一緒に撮ってもらったら?」


ロミオ「はぁ?なんでだよ。」

リリィ「ミラ、今日でBiBiの撮影最後なんでしょう?」




















マリオ「そうか。二人揃ってここに来るのも、今日で最後だな。」


リリィ「そうよ。これからは女優業に専念するんだから、もうこのスタジオに来ることもないのよ?」

ロミオ「いや、だからって・・・。」





















ロミオ「別に写真撮る必要はねぇだろ。」


リリィ「記念写真よ。プロのカメラマンに撮ってもらえるんだから喜びなさいよ。」

ロミオ「いいよ俺は。それにミラだって・・・。」






















ミランダ「私はいいわよ。せっかくなんだし。」


ロミオ「はぁ?」
























リリィ「ほら。」


ロミオ「いやでも、こんな格好だしさ。」

ミランダ「あんたの格好なんていつもと変わらないわよ。」

マリオ「早くしろ。このあと送別会があるんだから。」


ロミオ「ったく・・・。」



















ロミオ「あんまりくっつくなって・・・。」


ミランダ「なに照れてるのよ。」

ロミオ「照れてねぇよ。」

マリオ「撮るぞ~。」

ミランダ「ほらっ。」


















ロミオ「だから、くっつきすぎ・・・・。」

ミランダ「知ってる?ロミオ。写真ってね、あんたが死んでもず~っと残るのよ。」

ロミオ「知ってるよそれくらい。」

ミランダ「あんたのそのぶっちょう面も、今日の記念写真として残るんだからね。せっかくの男前が台無しよ?」


















ロミオ「はぁ~・・・めんどくせぇな。」

ミランダ「そうこなくっちゃ。やればできるじゃない。」

ロミオ「ここ1ヶ月で男性モデルのポージングも見慣れたしな。」




















マリオ「なかなかいいじゃないか。お前もモデルやってみたらいいんじゃないか?」


ロミオ「いや、俺は・・・。」

リリィ「ムリよ。ロミオがカメラに向かって笑顔なんてできるわけないじゃない。」

ミランダ「それもそうね。」





















ミランダ「ロミオ・・・・。」